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しょうせつ えんちょう
小説 圓朝
正岡 容
線上閱讀正岡 容《小説 圓朝(しょうせつ えんちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 163,270 字 · 325 頁
ア、これでおしまいだな。
もういっぺん圓朝は覚悟のほぞを定めた。とまた最前とは別なジーンと硬ばった心持になりながら、しきりに襟を掻き合わせた。
間もなく歌六が下りてくるとすぐ花やかに芝居がかりの着倒の囃子が起って、黒衣着た萬朝たちがまめまめしく高座へ道具を飾りはじめた。
師匠さえあれを演ってしまわなかったら、今夜この道具で見ン事かなりにきてくれているこのお客様を唸らせてみせるんだが、近ごろ年の加減でいくらかもうろくしてしまったのだろう師匠の上が今更ながら怨めしかった。
やがて冴えた拍子木の音とともにキリキリ御簾が絞られたが、その拍子木の音の百分の一も圓朝の心は冴えなかった。ばかりか、水銀のようにドロンと重たく曇っていた。
「…………」
強いて面を晴れやかにして上がってゆくと、前に師匠が充分に伺った「小烏丸」もどきの別の噺をいとも危っかしい調子で喋りだした。すでに噺が似かよっている上に、「小烏丸」の急所急所は除けて喋っている。おもしろいわけがなかった。
しかも急仕立だけに鳴物のキッカケは始終外れる、せっかく鳴物のほうがピッタリ合ったかとおもうと圓朝のほうが口籠ったり、とんだいい違えをしたり、した。