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いけぶくろのみせ
山之口貘詩文集
山之口 貘
線上閱讀山之口 貘《山之口貘詩文集(いけぶくろのみせ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 44,477 字 · 93 頁
どうしても駄目なんだ。と、六さんに僕は訴えたが、六さんに言わせると、人間じゃないというのだった。
事実、この世界の生活者達は、老若男女、夜であろうがひるまだろうが、僕みたいな者が物珍らしく見ていようが、生理のためには、悠々と船端にしゃがんでいる彼等である。いつになったら僕も便秘をしなくなるだろう。
水神丸の仕事としては、鉄屑の運搬である。このダルマは、本所緑町一丁目の、製鉄原料問屋鈴木徳五郎商店の専属船だ。いま、商店の川っ縁で、七、八人の人夫達が、二十五、六貫ずつにまとめられた鉄屑を担いでは、水神丸に積み込んでいる。
午過ぎ、積荷が終ると、僕らは、甲板の掃除をしたりシイトを覆うたりして、出帆の準備を整えた。雨にでもならなければ、今夜七時か八時頃、船を一つ目の口まで出して置き、夜中の二時頃には、鶴見へ出帆の予定だが、この空模様では多分雨だと自信ありげに六さんが言う。
一つ目の口とは、竪川一の橋のことで、そこから鶴見までは、所謂、曳船で行くとのことだ。
水神丸の船腹は深く沈み、僅かに七、八寸位しか浮いていない。このまま動き出しては、たちまち水浸りになりそうな表情をして、船は平べったく腹這いになっている。