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さんけいにいくるひとびと

山谿に生くる人々

葉山 嘉樹

線上閱讀葉山 嘉樹《山谿に生くる人々(さんけいにいくるひとびと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 33,699 字 · 67 頁

青空文庫

「何だろう」

「どうしたんだろう」

と、二人は腰を浮かして、表まで出た。

そこへ、以前、小林の飯場にいて、白粉を塗ってお睦の着物を着ては、ふざけ散らしていた、小男の林田が駆けて来た。何でも、検査を受けて、暫く小林の飯場にいて、それから上流の発電所の堰堤の方で、ジャックハンマーの稽古の意味で、働いているとかいう噂は聞いていた。

「おい、林田、暫くじゃないかい。どうしたんだい」

と、大山が立ち塞がるようにして聞いた。

「今、人間が二人、流れちゃったんだ。追っかけて行くとこなんだ」

「何だって、二人も流れたんだ」

「帰りだ、帰りだ。今はそんなことを喋舌っちゃいられないんだよ」

そう言って、小男の林田は、木の葉が吹きまくられるような恰好で、下流の方へ仲間の後を追って駆けて行った。

「おうい、林田ぁ待てよう。ちょっとだけ話を聞かせろよ」

と、大山は後の方の文句は、おかみへ聞かせるために言い添えて、駆けて林田の後に続いた。

――ものにはきっかけというものが要るもんだて――

と大山は、緑屋のおかみから逃げ出し得たことに、ほっとしたのであった。

緑屋から一丁ばかり下手に、小林飯場が通路から、ダラダラと二三間下りたところに建っていた。