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やまごしのあみだぞうのがいん
山越しの阿弥陀像の画因
折口 信夫
線上閱讀折口 信夫《山越しの阿弥陀像の画因(やまごしのあみだぞうのがいん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 15,125 字 · 30 頁
唯、この時代によく読誦せられ、写経せられた簡易な経文であったと言うのと、一つは有名な遺物があるからである。ところが、此経は、奈良朝だけのことではなかった。平安の京になっても、慧心僧都の根本信念は、此経から来ていると思われるのである。ただ、伝説だけの話では、なかったのである。此聖生れは、大和葛上郡――北葛城郡――当麻村というが、委しくは首邑当麻を離るること、東北二里弱の狐井・五位堂のあたりであったらしい。ともかくも、日夕二上山の姿を仰ぐ程、頃合いな距離の土地で、成人したのは事実であった。
ここに予め言うておきたいことがある。表題は如何ともあれ、私は別に、山越しの弥陀の図の成立史を考えようとするつもりでもなければ、また私の書き物に出て来る「死者」の俤が、藤原南家郎女の目に、阿弥陀仏とも言うべき端厳微妙な姿と現じたと言う空想の拠り所を、聖衆来迎図に出たものだ、と言おうとするのでもない。そんなものものしい企ては、最初から、しても居ぬ。ただ山越しの弥陀像や、彼岸中日の日想観の風習が、日本固有のものとして、深く仏者の懐に採り入れられて来たことが、ちっとでも訣って貰えれば、と考えていた。