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やまごしのあみだぞうのがいん
山越しの阿弥陀像の画因
折口 信夫
線上閱讀折口 信夫《山越しの阿弥陀像の画因(やまごしのあみだぞうのがいん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 15,125 字 · 30 頁
唯この両手の指から、此画の美しさが、俄かに陥落してしまう気がする。其ほど救い難い功利性を示している。此図の上に押した色紙に「弟子天台僧源信。正暦甲午歳冬十二月……」と題して七言律一首が続けられている。其中に「……光芒忽自二眉間一照。音楽新発耳界驚。永別二故山一秋月送。遥望二浄土一夜雲迎」の句がある。故山と言うのは、浄土を斥しているものと思えるが、尚意の重複するものが示されて、慧心院の故郷、二上山の麓を言うていることにもなりそうだ。
此図の出来た動機が、此詩に示されているのだろうから、我々はもっと、「故山」に執して考えてよいだろう。浄土を言い乍ら同時に、大和当麻を思うていると見てさし支えはない。此図は唯上の題詞から源信僧都の作と見るのであるが、画風からして、一条天皇代の物とすることは、疑われて来ている。さすれば色紙も、慧心作を後に録したもの、と見る外はないようだ。
一体、山越し阿弥陀像は比叡の横川で、僧都自ら感得したものと伝えられている。真作の存せぬ以上、この伝えも信じることはむつかしいが、まず凡そう言う事のありそうな前後の事情である。図は真作でなくとも、詩句は、尚僧都自身の心を思わせているということは出来る。