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とうげにかんするに、さんのこうさつ

峠に関する二、三の考察

柳田 国男

線上閱讀柳田 国男《峠に関する二、三の考察(とうげにかんするに、さんのこうさつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 5,027 字 · 10 頁

青空文庫

四 峠の衰亡

谷川に沿って上れば、自然に低い所を越えることになる。従って「たわ」は頂線の「たわ」か、山側の「たわ」か容易に決しにくいのである。とにかく昔の山越は深く入って急に越え、今の峠は浅い外山から緩く越えることは事実である。大小何れの峠を見ても旧道と新道との相違は即ちこれである。峠路に限って里程の遠くなるのを改修といっている。それというのが七寸以下の勾配でなければ荷を負うた馬が通らず、三寸の勾配でなければ荷車が通わぬとすれば、馬も車も通らぬ位の峠には一軒の休み茶屋もなく、誰しも山中に野宿はいやだから、急な坂で苦しくとも一日で越える算段をするのである。そのためには谷奥の山村は誠に重要であった。関所のある峠は勿論のこと、関はなくても難所と聞いては、西行も宗祇も此処へ来て一宿したからである。然るに新道が開けるとその村は不用になる。車屋あの村は何と言うなどと聞くと、それが昔の宿場であったこともしばしばである。人の智慧は切通しとなり隧道となり、散々山の容を庭木扱いにした揚句、汽車の如きに至っては山道を平地にしてしまった。

四 峠の衰亡

碓氷その他の坂本の宿、越後葡萄峠の如きは麓の村も衰えたが、その後に起った山道の衰微の方がなお烈しい。