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あらし

嵐

島崎 藤村

線上閱讀島崎 藤村《嵐(あらし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 54,007 字 · 108 頁

青空文庫

何もかも新規だ。まだ柱時計一つかかっていない炉ばたには、太郎の家で雇っているお霜婆さんのほかに、近くに住むお菊婆さんも手伝いに来てくれ、森さんの母さんまで来てわが子の世話でもするように働いていてくれた。

私は太郎と二人で部屋部屋を見て回るような時を見つけようとした。それが容易に見当たらなかった。

「この家は気に入った。思ったよりいい家だ。よっぽど森さんにはお礼を言ってもいいね。」

わずかにこんな話をしたかと思うと、また太郎はいそがしそうに私のそばから離れて行った。そこいらには、まだかわき切らない壁へよせて、私たちの荷物が取り散らしてある。末子は姪の子供を連れながら部屋部屋をあちこちとめずらしそうに歩き回っている。嫂も三十年ぶりでの帰省とあって、旧なじみの人たちが出たりはいったりするだけでも、かなりごたごたした。

人を避けて、私は眺望のいい二階へ上がって見た。石を載せた板屋根、ところどころに咲きみだれた花の梢、その向こうには春深く霞んだ美濃の平野が遠く見渡される。天気のいい日には近江の伊吹山までかすかに見えるということを私は幼年のころに自分の父からよく聞かされたものだが、かつてその父の旧い家から望んだ山々を今は自分の新しい家から望んだ。