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すばなれのふな

巣離れの鮒

佐藤 垢石

線上閱讀佐藤 垢石《巣離れの鮒(すばなれのふな)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 1,032 字 · 2 頁

青空文庫

寒い冷たいとはいうが、もう春だ。そろそろと水が温んでくる。川や沼の面に生色ある光がただよって、いつの間にか堤防の陽だまりに霜ぶくれの土を破って芝芽が小さな丸い頭を突き出すと魚も永い冬の蟄居から眼ざめるのである。鮒は晩秋水の深みに落ち込んで腐れ藻の下や泥底に集団をなして寒い一冬を越すのであるが、寒が明けて陽ざしが明るくなってくると、集団を解いて静かに動きはじめる。これを巣離れの鮒というのである。

鮒は厳冬の頃でも寒鮒釣りの鈎にかかるが、それは餌に絡まる振舞が甚だ不活発であるから、集団にめぐり会わなければ大釣りはないものである。ところが温み始めた水に誘われて泳ぎ出した鮒は積極的に餌を求めるようになる。寒鮒時代よりも沢山釣れるわけである。

巣離れの鮒を釣るには数本の竿を並べてもいいが、能率的であるのはヅキ式の探り釣りである。巣から離れた鮒は枯れた真菰の根などを緩やかに移動しているから釣る人も鮒の遊ぶ場所を探りながら移動して行くのが面白い。竿は二間半から三間くらい、胴のしっかりしたものがいい。道糸は秋田の三十本撚りくらいにして錘から上を三、四尺三厘柄のテグス、鈎は中輪の三分くらいで二本鈎にする。