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ていてんをみざるのき
帝展を見ざるの記
寺田 寅彦
線上閱讀寺田 寅彦《帝展を見ざるの記(ていてんをみざるのき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 7,664 字 · 16 頁
新聞雑誌に現われる短評などにも随分こういう心持をそのままに云い表わしたのが多いように見える。それで多くの人の口からは「今年のもつまらない」という概括的な歎息がもらされる。出品者に取っておそらくこれほど残念な張合いのない事はあるまいと思う。こういう批評は恐ろしく無責任な冷酷なものとして神経過敏な出品者の不快な反感を買うかもしれない。しかしこの種の批評は必ずしも無責任とは云えない、ただ当然な事実の正直な告白に過ぎない。赤と緑の光を混じたものを見て灰色だというのはどうにもならない科学的の事実である。しかし全体の合成的効果が灰色であるという事は、それを分光器で分析した時に色彩の現れないという事にはならないと同様に、日本画部に傑作がないという事はうっかり云われない。
かなりな作品があるのに観覧者の印象が空虚だとすれば罪は展覧会という無理な制度にあるのだろう。こういう意味で個人作品展覧会というものの有難味が今更のように深く味わわれる。
分光器にかけて分析した帝展の日本画が果してみんなそれぞれに充分飽和した特色を含んでいるだろうか。それともいくら分析してもどこまでも不飽和な寝惚けた鼠色に過ぎないだろうか。