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ぼうしのないすいへい

帽子のない水兵

田中 貢太郎

線上閱讀田中 貢太郎《帽子のない水兵(ぼうしのないすいへい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 390 字 · 1 頁

青空文庫

まだ横須賀行の汽車が電化しない時のことであった。夕方の六時四十分比、その汽車が田浦を発車したところで、帽子を冠らない蒼い顔をした水兵の一人が、影法師のようにふらふら二等車の方へ入って往った。

(またこの間の水兵か)

それに気の注いた客は、数日前にもやはりそのあたりで、影法師のようなその水兵を見かけていた。その時二等車の方から列車ボーイが出て来た。

「君、この間も見たが、今二等車の方へ往った水兵は、なんだね」

列車ボーイは眼をくるくるとさした。

「帽子のない水兵でしたか」

「そうだよ」

「入って往ったのですか」

「往ったとも、気が注かなかったかね」

「それじゃ、また出たのか」

「出たとは」

「そんなことを云いますよ」

客はその後で、列車ボーイから、三人伴れの水兵が、田浦方面へ遊びに往っていて、帰りにその一人が帽子を無くしていたので、それがために、途中で轢死していると云うことを聞かされた。