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げんじゅつてんまたろう

幻術天魔太郎

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《幻術天魔太郎(げんじゅつてんまたろう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 45,616 字 · 90 頁

青空文庫

縁がわにとびすさって、板敷のうえに平伏する猫間犬丸の塙三郎丸の手をとって、天魔太郎は自分のそばにつれてくるのでした。

「ありがたい、天魔太郎どの」

「いや、天魔太郎とよびすてにしてもらおうか。貴公は、私よりも年上のことだし」

「年と腕とはちがいましょう」

「そんなことをあらそってもはじまらぬ。それではかりに、私は年下ながら兄になろう」

「ともかくも、一月後の五月七日には、将軍家光日光参拝にでかけるはず、その道すじこそは」

「いかにも」

ふたりはいわず語らずのうちに、家光を討ちとる計画をのみこむのでした。

「ところで、ここに一つの相談がある」

「とおっしゃるのは?」

「道灌山で、私を相手にたたかった三人のうち、覚心坊はとるにもたらぬ山師坊主だが、尾張藩の青柳又八郎はなかなかの人物、私に負けたうえは、――塙氏、ちょっと耳を」

天魔太郎は、塙三郎丸の耳に、なにやらささやくのです。

青柳又八郎はその晩、市ガ谷尾張屋敷の、自分の長屋にたちかえりました。

天魔太郎とのたたかいにさんざんの不首尾で藩主(殿さま)の大納言さまが、将軍家光にさんざんイヤ味をいわれて、プンプンとしてもどってまいりましたが、いずれあしたは、青柳又八郎を長のおいとまにするか、それとも閉門にするか、おだやかならぬ空気が、きんじょの人々のうわさとなって、屋敷じゅう