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ようねんじだい
幼年時代・晩夏
堀 辰雄
線上閱讀堀 辰雄《幼年時代・晩夏(ようねんじだい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 85,965 字 · 169 頁
そういう負けず嫌いな母がおようさんのあとにくると、父は急に醒めた人のようになって、為事にも身を入れ出した。そうして小梅の家は以前にもまして、あかるく、人出入りが多くなっていった。
父も母も、江戸っ子肌の、さっぱりした気性の人であったから、そのまま私のことでは一度も悶着したこともないらしく、誰れの目にもほんとうの親子と思われるほどだった。それからまた、おようさんとも以前とかわらずに附き合って、由次郎にもずっとうちの為事をしてもらっていた。
小さな私だけはなんにも知らないで、いつかその由次郎にもなついて、来るとかならず肩車に乗せてもらって、用達しにも一しょについていったりしていた。
その五つか六つぐらいの頃の私は、いまの私とはちがって、かなりな道化ものでもあったようだ。父や母につれられて、おばさんの家などに行くと、おばさんにすぐ三味線をじゃかじゃか鳴らして貰って、自分は手拭を頭の上にちょいとのせ、妙な手つきや腰つきをして、「猫じゃ、猫じゃ……」とひとりで唄いながら、皆にひと踊り踊ってみせた。そんな俗踊をいつのまにか見よう見真似で覚えてしまったのである。