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いくどめかのさいご
幾度目かの最期
久坂 葉子
線上閱讀久坂 葉子《幾度目かの最期(いくどめかのさいご)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 59,103 字 · 121 頁
一年たった。かわいらしい感傷の月日だった。彼のことをどこからともなくきいた。養子先は大金持で奥さんは絶世の美人だっていうことを。子供が生まれたということを。
一年たった。私は感傷だけで済まされなくなった。私の肉体が成長するにつれて、私の心の中にある彼への恋もふくらんで来た。日がたつにつれてそれは消えるどころか、はげしい情慾となって私をくるしめた。そしてその苦しみをはき出したいため私は職業についた。真面目に社会をみようとするのではなく、又家庭に物質的援助をするためでもなかった。私は誰かまわずにふれ合いたかった。群集の中に逃げこみたかった。一人でいるとたまらなく寂しく、群集の中に彼と私との間を遮断するものがきっとあると思ったのだ。ところが、それは反対の結果を生んだ。遮断どころか以前にもまして私は彼に近づいて行ったのだ。
というのは、私は度々社の用事で大阪へ出張した。その行先は彼のいるH病院の川をへだてて十五分も行ったところのビルだった。そうして私はその出張がある度に、一停留場手前で降りてその病院の脇を通った。偶然に彼と会わないかとそればかりを念じた。