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いくどめかのさいご

幾度目かの最期

久坂 葉子

線上閱讀久坂 葉子《幾度目かの最期(いくどめかのさいご)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 59,103 字 · 121 頁

青空文庫

だがそれが度重なる毎に、私は故意に会おうと思うようになった。

ある雨の日、静かな春の午後、私は遂に決心した。

黒いレインコートはよれよれになっている。脇にかかえた四角い鞄、手にもっている傘も黒く、髪は味気なく後で一まとめにし、口紅はさしてはいるけれどそれは目だたぬ美しさというそれではなく、半分はげ落ちたみにくいものである。疲れ切った私の姿、そう、私は毎日の生活に疲れている。美に対する感覚も失ってしまい、遠いものへの憧憬も忘れ、全くの卑俗な職業婦人になってしまっている。ほこりにまみれ、どろ臭く、金と数字と目上の人へのおべっかしきゃない。けれどその中にたった一つ残っていた、かなしいけれど純粋なものが私の彼への感情だったろう。

正午のサイレンが鳴る。大勢の人が出たり入ったりしているその玄関を一歩一歩奥へ入る。すぐにあの消毒くさいにおいが鼻につく。病いに苦しむ人のいきれ。重たい空気。

「O外科は」

「あそこの右へ入ったところ」

看護婦は足早にたちさる。O外科の前、人は混雑しており、室の内側の椅子も、外の椅子も満員。子供の泣き声。それにおかまいなしの器具の音、上ぐつのせわしい音、その間を白い看護婦のスカートと医員達の手術着がちらちら動く。