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いくどめかのさいご

幾度目かの最期

久坂 葉子

線上閱讀久坂 葉子《幾度目かの最期(いくどめかのさいご)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 59,103 字 · 121 頁

青空文庫

「こっちです。僕いまから行きます。呼びましょう」

ブリキのとれかかったコンクリートの階段をかたかたいわせながら上る。

「戸田君に用事。そう。腹へっちゃいますよ。疲れますね。医者もつらい」

一人でべらべら喋るこの人の後から、私は無言でついて上った。心の中では目の前に迫っている会話で一ぱいである。

(何用で来たのです? 僕は忙しいんですよ)(やあいらっしゃい。よく来ましたね)いやちがう。ちがう。(一体貴方は誰ですか)これだ、これにちがいない。

「戸田君、御客さんだよ」

部屋の前へ来ると、その人は大声で呼んで中へ入って行った。私は壁にぴったり体をつけてうつむいている。にぎりこぶしをつくっているのに、それがぶるぶるふるえる。

(会いたかったのです。会いたかったのです)私の中でさけぶ。暫くしてスリッパの音がする。私は顔を上げることが出来ない。じっとうつむいたまま言葉を待つ。そうだ、心の中で少し期待している。何を。スリッパの音は私の前でぴったりとまる。白い衣がみえる。私はつまさきよりだんだん上の方に目をあげる。と、まだその視線が顔のところに届かないうちに、

「私が戸田ですが」