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いくどめかのさいご

幾度目かの最期

久坂 葉子

線上閱讀久坂 葉子《幾度目かの最期(いくどめかのさいご)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 59,103 字 · 121 頁

青空文庫

小学校六年の時、私の作文、お父さんが入選したことがあります。私は父をとても愛していました。父も又私を人一倍かわいがっていたようです。というのは、父の趣味をうけついだのは、私ひとりだったからでしょう。絵や、陶器や、或いは文学に対する興味も、父の影響でした。私は父を非常に偉い人だと思っておりました。然し、年をとり、今迄の自分の、父に対する解釈は、大きな錯覚だったことに気づいたのです。私の父は、私を、自分の類型にしたてあげようとつとめたようです。そして、わが娘を、自分のこしらえた寸法通りに、はめこもうとしたのです。父は、学校で秀才だったらしく、そのことをいつも自慢たらしく、子供にきかせていましたが、子供の頃は、私の父に対する崇敬の念をまさしめることになりましたが、だんだんそうはゆかなくなって来ました。戦争が終り、私が会社の給仕などするようになってから、つまり、家庭をちょっとでもはなれたところから、父を眺めることがはじめて出来たのです。父は狭い世界を、おのれだけ正しければよいという気持で守りつづけている人でした。酒も煙草ものまない。常に本をよんでいる。父は父のあゆんで来た道をいつも誇らしく思っているのです。