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いくどめかのさいご
幾度目かの最期
久坂 葉子
線上閱讀久坂 葉子《幾度目かの最期(いくどめかのさいご)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 59,103 字 · 121 頁
私は、感情的に、皮膚的に男を嫌がっていました。ふと思いついたのです。私のハンドバッグの下に、封筒があったのを。その日、民芸品の店屋から、原稿を頼まれていて、二枚ばかり書いた後一二枚の白い原稿用紙が、その封筒にはいって手許にあったのです。私は、その封筒(じょうぶくろっての)を、裏がえして男の前につき出したのです。
兵庫県警察局長、とかいたはんが押してあったのです。男の血相がかわりました。その封筒は、あゆみという雑誌がはいって、毎月、私の家へおくられて来るものです。丈夫で便利なので、私はそれをよく原稿いれに利用していました。
さあそれからが大変、その男は狼狽し、みる間に卑屈になりました。私は男の態度を、最初冷淡にみていましたが、あまり気の毒なので、それに、うるさいので、ごめんなさいと云いました。警察局長と、どんな関係か、私は説明させられたり、とにかく大騒ぎになったのです。彼は男を大へんいたわっていました。一時間以上も、男はうろたえつづけました。私はうるさくなって、彼に出ようと云い、遂に、席をたちました。でも、柔い顔をみせていました。男は、隣りの果物屋で果物をかい、私にもたせました。