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かげ
影
線上閱讀芥川 竜之介《影(かげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 10,337 字 · 21 頁
「その後終列車まで汽車はないですね。」
「ありません。上りも、下りも。」
「いや、難有う。帰ったら里見君に、よろしく云ってくれ給え。」
陳は麦藁帽の庇へ手をやると、吉井が鳥打帽を脱ぐのには眼もかけず、砂利を敷いた構外へ大股に歩み出した。その容子が余り無遠慮すぎたせいか、吉井は陳の後姿を見送ったなり、ちょいと両肩を聳やかせた。が、すぐまた気にも止めないように、軽快な口笛を鳴らしながら、停車場前の宿屋の方へ、太い籐の杖を引きずって行った。
鎌倉。
一時間の後陳彩は、彼等夫婦の寝室の戸へ、盗賊のように耳を当てながら、じっと容子を窺っている彼自身を発見した。寝室の外の廊下には、息のつまるような暗闇が、一面にあたりを封じていた。その中にただ一点、かすかな明りが見えるのは、戸の向うの電燈の光が、鍵穴を洩れるそれであった。
陳はほとんど破裂しそうな心臓の鼓動を抑えながら、ぴったり戸へ当てた耳に、全身の注意を集めていた。が、寝室の中からは何の話し声も聞えなかった。その沈黙がまた陳にとっては、一層堪え難い呵責であった。彼は目の前の暗闇の底に、停車場からここへ来る途中の、思いがけない出来事が、もう一度はっきり見えるような気がした。