輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
かげ
影
線上閱讀芥川 竜之介《影(かげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 10,337 字 · 21 頁
……枝を交した松の下には、しっとり砂に露の下りた、細い路が続いている。大空に澄んだ無数の星も、その松の枝の重なったここへは、滅多に光を落して来ない。が、海の近い事は、疎な芒に流れて来る潮風が明かに語っている。陳はさっきからたった一人、夜と共に強くなった松脂のを嗅ぎながら、こう云う寂しい闇の中に、注意深い歩みを運んでいた。
その内に彼はふと足を止めると、不審そうに行く手を透かして見た。それは彼の家の煉瓦塀が、何歩か先に黒々と、現われて来たからばかりではない、その常春藤に蔽われた、古風な塀の見えるあたりに、忍びやかな靴の音が、突然聞え出したからである。
が、いくら透して見ても、松や芒の闇が深いせいか、肝腎の姿は見る事が出来ない。ただ、咄嗟に感づいたのは、その足音がこちらへ来ずに、向うへ行くらしいと云う事である。
「莫迦な、この路を歩く資格は、おればかりにある訳じゃあるまいし。」
陳はこう心の中に、早くも疑惑を抱き出した彼自身を叱ろうとした。が、この路は彼の家の裏門の前へ出るほかには、どこへも通じていない筈である。して見れば、――と思う刹那に陳の耳には、その裏門の戸の開く音が、折から流れて来た潮風と一しょに、かすかながらも伝わって来た。