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こいとじってときんちゃくきり

恋と十手と巾着切

山中 貞雄

線上閱讀山中 貞雄《恋と十手と巾着切(こいとじってときんちゃくきり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 12,138 字 · 25 頁

青空文庫

S=横丁の角

角を曲って立ち止って絵と印籠を照し合わす。

又違った!

チェッと舌打ちしてその印籠を投げる。

大地に落ちた印籠。

その前にハタと足を止めたのが今の侍である。

よく見た印籠と思い乍ら拾い上げて小首を傾げて居たが、

何の気なしに腰に手をやると印籠が無い。アレッと驚いた。

まるで狐に魅された様なものである。

S=居酒屋(夜)

土間で三次が床几に腰掛けてチビリチビリやって居る。

時々座敷の方を見て考える。

座敷の衝立の向うで侍が五、六名酒を呑んでいる。

中の一人は棚倉伝八郎である。

三次「よく見た顔だ」と考える。

若しやと思って女を呼んで、

「あれは何方様だい」と訊く。

女が、

T「つい其処の道場の先生で相良伝右衛門とか仰しゃる御方」

と言う。

三次「違ったかな」と、も一度見直す。

棚倉の一行は帰り支度を初めた。

三次まてよと考えた。よしっと何か思い当ると例に依ってニンマリ笑った。

土間に下りて来る棚倉の一行。

三次急に横っ腹を抱えて「痛え痛え」と苦しみ出す。

店の女が驚いて「どうなさいました」と介抱する。

三次「痛え痛え」と盛んに苦しむ。

土間に下りた棚倉が足を止めた。