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こいのでんしちろう

恋の伝七郎

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《恋の伝七郎(こいのでんしちろう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 29,650 字 · 60 頁

青空文庫

「出来るよ、おれがやってみせる、汚ねえ慾や曲った根性でやるんじゃあねえ、正真正銘これっぱかりの嘘もねえ恋のためなんだ、それも他に打つ手がなくってぎりぎり結着の、どうしようもなくってやるこった、誰に憚ることがあるもんか、堂々とやんねえな」「そうだ、こいつは正真正銘のぎりぎり結着だ、手を貸してくれるか忠さん」「いいとも、乗りかかった舟だ、双肌ぬぎでやろうじゃあねえか」「まことに済まない」伝七郎はそこで膝の上へ手を揃えた、「本当なら幾らか力にならなければならないおれが、あべこべに毎も厄介をかけ通したうえ、到頭こんなろくでもないいざこざに巻き込んでしまった、ただ一人の友達のおまえに、こんな迷惑をかけようとは思わなかった、だが云わしてくれ、本当におれは嬉しい、嬉しいぜ忠さん」「それを云うこたあねえや、おめえおれを泣かせるぜ」忠太郎は喉になにか絡まったような声で云った。

二人がこのようなかんばしからぬ相談をしたことに就て、あまり怒らないで頂きたい、というのは、それほど智恵のまわりのよくない彼等の企みが、そう旨く思う壺にはまる道理がないからである。