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こいのでんしちろう
恋の伝七郎
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《恋の伝七郎(こいのでんしちろう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 29,650 字 · 60 頁
ような子供だった。彼は決して同じ足軽長屋の子供とは遊ぼうとせず、いつも伝七郎を好んで誘いに来、巧みに自分が音頭取りになって暴れた、その悪戯なかまに通町の小商人の子で忠太郎という者がいた、詰りこれがいま鍛冶屋町の裏店にくすぶっている忠太なのだが、彼に就てはあとで語る機会があると思う。……こういうわけで、伝七郎と銀之丞とは七八つの頃からの友達であるが、「友達」という言葉は伝七郎の側からいうので、銀之丞がそう思っているかどうかは甚だ疑問である。なぜなら彼が伝七郎と親密に遊んだのは初めの二三年で、それからのち平田とか川勝などという、永井家より上席の家の子弟と近づくに従って、伝七郎などには振向きもしなくなった。意地悪な云い方をすれば、彼は重役の家の子弟に近づくため伝七郎を踏台にしたようなものであった。もっとも彼にはそうする値打ちがあったといってもよいだろう、長ずるに従って風采は歌舞伎役者のように端麗になり、学問所へ入れば首席を占めるし、武芸も抜群で、二十一歳のときから藩の道場で師範代をするという風だった。早くから重役の子たちと交わっていたので、十七八になると上役に注目されだし、現在では奉行役所で筆頭書役を勤めている、もちろん身分も小姓組にのぼり、食禄も百七十石に加増された。