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うらみなきさつじん
恨なき殺人
宮島 資夫
線上閱讀宮島 資夫《恨なき殺人(うらみなきさつじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 27,611 字 · 56 頁
そしてたまたま一年も同じ処に落ちついていると、限りない退屈をさえ感ずるのであった。然し、囚人に刑期の明ける楽しい日の望みはあっても、彼を待つものは、何時も失職の暗い苦しい日ばかりである。それでも彼は、その馬鹿気た無為で退屈な時よりも、苦しい自由の日が堪らなく恋しくなる時があった。人生には苦痛か退屈の日より外には何もない。ただ時々に、自分の好きな何かを選ぶだけのことだと、彼は考えるようになっていた。
八月もこんな山の中で、不自由な思いをして暮して来たんだと思うと、今更らにその月日のすべてが、ただ屈辱の堆積を語っているようにも思われる。わけても昨日からの事を考えると、たしかに何物かが屈辱を強いている。――「やっぱり止めるより外に途はないんだ」と彼は思った。
この山を止して何処に行くと言うアテもない。今までにも幾度か苦しんだ失職――飢餓に襲われることも解り切っている。けれどもそれは自分の感情を蹂躙される、堪え難く不愉快な日を送るのと、何の違いもないことだ。失職してさまよっている中は、苦しい中にも何か夢を描くことも出来るが、この退屈な屈辱な日の先きには、暗い不安があるばかりだ。