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きょうぞうのちち
恭三の父
加能 作次郎
線上閱讀加能 作次郎《恭三の父(きょうぞうのちち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 9,742 字 · 20 頁
「もう相手にならんと、蚊が食うさかい、早う蚊帳へ入らっしゃい。お父さんは酔うとるもんで、又いつもの愚痴が始まったのやわいの。」
「何じゃ! おれが酔うとる? 何処に己りゃ酔うて居るかいや。」
「そうじゃないかいね、お前様、そんなね酔うて愚痴を言うとるじゃないかね。」
「何時愚痴を言うたい? これが愚痴かい。人に手紙を読うでやるのに、あんな読方が何処の国にあろい?」
「あれで分ってるでないかいね、執拗い!」
「擲きつけるぞ! 貴様までが……」と父は恐しい権幕になった。枕でも投げようとしたのか、浅七は、
「父様何するがいね、危い。……この母様また黙って居らっされかア。」と仲裁する様に言った。
「まるで心狂のようやが。」と母は稍々小さな声で言った。
奥の間の方から猫がニャンと泣いてのそ/\やって来た。それで父親は益々癪に触ったと見えて、
「屁糞喰らえ!」と呶鳴りつけた。
母と弟とはドッと笑い出した。恭三は黙って居った。猫は恭三の前に一寸立ち止って、もう一度ニャンと啼いてすと/\と庭に下りて行った。父親は独言の様に、
「己りゃこんな無学なもんじゃさかい、愚痴やも知れねど、手紙というものはそんなもんじゃないと思うのじゃ。