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あくそう
悪僧
田中 貢太郎
線上閱讀田中 貢太郎《悪僧(あくそう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 5,516 字 · 11 頁
と、小さな旋風が起ってそれが薄すりと塵を巻きながら、轎夫の頭の上に巻きあがって青い簾の垂を横に吹いた。簾は鳥の飛びたつようにひらひらとあがった。艶麗な顔をした夫人が坐っていた。李張は女の美にうたれた。このな女はどんな秀才の夫人であろう、と、思いながら立ちどまってその轎を見送っていたが、その足は何時の間にか轎の往く方へ動きだした。
金粉をまき散らしたような西の空に紅い陽がどんよりとかくれた。そこここの人家の門口に咲いていた李の花も灰色になった。きれいな轎は郊外にある大きな邸宅の門へ入った。李張は夢が醒めたようにその前に衝立っていたが、心残りがして帰れないのでその邸宅の周囲を歩きはじめた。そして、裏門の方に往ってみると裏門の横手の垣に添うて小さな丘があった。李張はふらふらとその丘の上にあがった。黄昏の邸内には燭火の光が二処からちらちらと漏れていた。垣はすぐ一跨ぎのところにあった。彼はそこに佇んで燭の光を見ていた。
四辺は真暗に暮れてしまって雨気をふくんだ風が出た。李張は何時の間にか邸内へ入り、燭の見えている東房の方へ往って、そこの窓から内を覗いてみた。