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あくじゅうへん

悪獣篇

泉 鏡花

線上閱讀泉 鏡花《悪獣篇(あくじゅうへん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 36,715 字 · 73 頁

青空文庫

別に不思議なことは無いじゃありませんか。毛虫は気味が悪い、けれども怪いものでも何でもない。」

「そう言えばそうですけれど、だって婆さんの、その目が、ねえ。」

「毛虫にだって、睨まれて御覧なさい。」

「もじゃもじゃと白髪が、貴郎。」

「毛虫というくらいです、もじゃもじゃどころなもんですか、沢山毛がある。」

「まあ、貴下の言うことは、蝸牛の狂言のようだよ。」と寂しく笑ったが、

「あれ、」

寺でカンカンと鉦を鳴らした。

「ああ、この路の長かったこと。」

七

釣棹を、ト肩にかけた、処士あり。年紀のころ三十四五。五分刈のなだらかなるが、小鬢さきへ少し兀げた、額の広い、目のやさしい、眉の太い、引緊った口の、やや大きいのも凜々しいが、頬肉が厚く、小鼻に笑ましげな皺深く、下頤から耳の根へ、べたりと髯のあとの黒いのも柔和である。白地に藍の縦縞の、縮の襯衣を着て、襟のこはぜも見えそうに、衣紋を寛く紺絣、二三度水へ入ったろう、色は薄く地も透いたが、糊沢山の折目高。

薩摩下駄の小倉の緒、太いしっかりしたおやゆびで、蝮を拵えねばならぬほど、弛いばかりか、歪んだのは、水に対して石の上に、これを台にしていたのであった。