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あくじゅうへん
悪獣篇
泉 鏡花
線上閱讀泉 鏡花《悪獣篇(あくじゅうへん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 36,715 字 · 73 頁
よくよくの事なるべし。
「参りましょうか。靄が霽れれば、ここと向い合った同一ような崖下でありますけれども、途中が海で切れとるですから、浜づたいに人の来る処ではありません。
御覧なさい、あの小児の船を。大丈夫漕ぐですから、あれに乗せてもらいましょう、どうです。」
夫人は、がッくりして頷いた、ものを言うも切なそうに太く疲労して見えたのである。
「夫人、それでは。」
「はい、」
と言って礼心に、寂しい笑顔して、吻と息。
二十六
「そんな、そんな貴女、詰らん、怪しからん事があるべき次第のものではないです。汚れた身体だの、人に顔は合わされんのとお言いなさるのはその事ですか。ははははは、いや、しかし飛んだ目にお逢いでした。ちっとも御心配はないですよ。まあ、その足をお拭きなさい。突然こんな処へ着けたですから、船を離れる時、酷くお濡れなすったようだ。」
廉平は砥に似て蒼き条のある滑かな一座の岩の上に、海に面して見すぼらしく踞んだ、身にただ襯衣を纏えるのみ。
船の中でも人目を厭って、紺がすりのその単衣で、肩から深く包んでいる。浦子の蹴出しは海の色、巌端に蒼澄みて、白脛も水に透くよう、倒れた風情に休らえる。