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あくじゅうへん
悪獣篇
泉 鏡花
線上閱讀泉 鏡花《悪獣篇(あくじゅうへん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 36,715 字 · 73 頁
その時も、苫を破って獣が飛んで行ったとおっしゃるではございませんか。
ですから私は、」
と早や力なげに、なよなよとするのであった。
「いや、」
と当なしに大きく言った、が、いやな事はちっともない。どうして発見したかを怪しまれて、湾の口を横ぎって、穉児に船を漕がせつつ、自分が語ったは、まずその通。
「ですけれども、何ですな。」
「いいえ」
今度は夫人から遮って、
「もう昨日、二つ目の浜へ参りました途中から、それはそれは貴下、忌わしい恐ろしい事ばかりで、私は何だか約束ごとのように存じます。
三十という年に近いこの年になりますまで、少い折から何一つ苦労ということは知りませんで、悲しい事も、辛い事もついぞ覚えはありません、まだ実家には両親も達者で居ます身の上ですもの。
腹の立った事さえござんせん、余り果報な身体ですから、盈れば虧くるとか申します通り、こんな恐しい目に逢いましたので。唯今ここへ船を漕いでくれました小児たちが、年こそ違いますけれども、そっくり大きいのが銑さん、小さい方が賢之助に肖ておりましたのも、皆私の命数で、何かの因縁なんでございましょうから。」