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あくじゅうへん

悪獣篇

泉 鏡花

線上閱讀泉 鏡花《悪獣篇(あくじゅうへん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 36,715 字 · 73 頁

青空文庫

」

口へ出すとよりは声をのんで、

「貴下、」

「…………」

「貴下、」

「…………」

「貴下、ほんとうでございますか。」

「勿論、懺悔したのじゃで。」

と、眉を開いてきっぱりという。

膝でじりりとすり寄って、

「ええ、嬉しい。貴下、よくおっしゃって下さいました。」

としっかと膝に手をかけて、わッとまた泣きしずむ。廉平は我ながら、訝しいまで胸がせまった。

「私と言われて、お喜びになりますほど、それほどの思をなさったですか。」

「いいえ、もう、何ともたとえようはござんせん。死んでも死骸が残ります、その獣の爪のあと舌のあとのあります、毛だらけな膚が残るのですもの。焼きましても狐狸の悪い臭がしましょうかと、心残りがしましたのに、貴下、よく、思い切ってそうおっしゃって下さいました。快よく死なれます、死なれるんでございますよ。」

「はてさて、」

「………………」

「じゃ、やっぱり、死ぬのを思い止まっちゃ下さらん。」

顔を見合わせ、打頷き、

「むむ、成程、」

と腕を解いて、廉平は従容として居直った。

「成程、そうじゃ。貴女ほどのお方が、かかる恥辱をお受けなさって、夢にして、ながらえておいでなさる筈ではないのじゃった。