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あくりょう
悪霊
江戸川 乱歩
線上閱讀江戸川 乱歩《悪霊(あくりょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 33,980 字 · 67 頁
もう部屋の用意もちゃんと出来てますのよ」
そこへ咳ばらいの声がして、ドアが開いて、黒川先生が入って来られた。君も知っている様に、先生の風采は少しも学者らしくない。髭がなくて色が白く、年よりはずっと若々しくて、声や物腰が女の様で、先生の生徒達が渾名をつける時女形の役者を聯想したのも無理ではないと思われる。
先生は「ヤア」と云って、そこの肘掛椅子に腰をかけられたが、僕達の取交していた話題を鋭敏に察しられた様子で、
「大した怪我じゃないんだ。こうして歩けるんだからね。馬鹿な真似をしてしまって」
左足に繃帯が厚ぼったく足袋の様にまきつけてある。
「犯人はまだ分らない様だね。君はあれから検事を訪問しなかったの」
先生は、風呂場の鏡のことを僕が云い出すのを恐れる様に、すぐ様話題を捉えられた。あれからというは僕達が姉崎さんの葬式でお会いしてからという意味なのだ。
「エエ、一度訪ねました。併し、新しい発見は何もないと云っていました。その筋でも、やっぱり例の矢絣の女を問題にしている様ですね」
僕が矢絣の女というと、先生は何ぜか一寸赤面された様に見えた。先生が顔を赤らめられるなんて非常に珍らしい事なので、僕は異様の印象を受けたが、その意味は少しも分らなかった。