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おしみなくあいはうばう

惜みなく愛は奪う

有島 武郎

線上閱讀有島 武郎《惜みなく愛は奪う(おしみなくあいはうばう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 79,397 字 · 159 頁

青空文庫

道路を歩まないで山林を徘徊するものは警戒される。それはそうあるべきことだ。何故といえば、畑はその所有者の生計のために存在し、道路は旅人の交通のために設けられているのだから。それは私に智的生活の鳥瞰図を開展する。ここに人がある。彼はその田園の外に拡がる未踏の地を探険すべき衝動を感じた。彼は田園を踏み出して、その荒原に足を入れた。そこには彼の踏み進むべき道路はない。又掠奪すべき作物はない。誰がその時彼の踏み出した脚の一歩について尤めだてをする事が出来るか。彼が自ら奮って一歩を未知の世界に踏み出した事それ自身が善といえば善だ。彼の脚は道徳の世界ならざる世界を踏んでいるのだ。それは私に本能的生活の面影を微かながら髣髴させる。

黒雲を劈いて天の一角から一角に流れて行く電光の姿はまた私に本能の奔流の力強さと鋭さを考えさせる。力ある弧状を描いて走るその電光のここかしこに本流から分岐して大樹の枝のように目的点に星馳する支流を見ることがあるだろう。あの支流の末は往々にして、黒雲に呑まれて消え失せてしまう。人間の本能的生活の中にも屡※(二の字点、1-2-22)かかる現象は起らないだろうか。