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ゆかいなはなし

愉快な話

豊島 与志雄

線上閱讀豊島 与志雄《愉快な話(ゆかいなはなし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 2,945 字 · 6 頁

青空文庫

たった八日間に、僕の見ている眼の前で、一万九千匹の猫と、二万三千五百匹の鼠が、ばたばた死んでしまいました。可哀そうな奴等。思い出すと、どうもいけない。あの時の損は五十万弗からでしょうな。」

これが、或るカフェーでの、或る紳士の話である。まだまだ、同様なヨタが続く。こんなことをすまして書き立てる作者は、さぞ幸福だろう。梅干というものは、梅の木の何方に向いた何番目かの枝の何番目かの実を、何月何日の何時頃にとったものが、最も美味である、などと『南国太平記』のなかで坊さんに饒舌らしてる直木三十五も、さぞ得意だったろう。『馬車』のなかで占筮の講義を長々とやってる横光利一の気持とは、まるで質が違うようだ。

ヨタは真面目でないところにその面白みがある。がふざけては堕落する。そのかねあいがむずかしいのだ。所謂ナンセンス文学などのうちには、新聞紙に引用されるくらいの愉快なエピソードが、少しは現われてもよかろう。プロレタリア文学などにも、時には愉快な通風孔が必要だ。それは案外強く労働者や農民を惹きつける。飲食の時など、彼等は如何に愉快な話を歓迎することか。而もそれは断じて、被搾取の苦渋な生活からの逃避ではない。