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あいとにんしきとのしゅっぱつ

愛と認識との出発

倉田 百三

線上閱讀倉田 百三《愛と認識との出発(あいとにんしきとのしゅっぱつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 64,420 字 · 129 頁

青空文庫

されど人は考うる葦なり。全世界が彼を滅ぼさんとするとも、彼は死することを自知するがゆえに、殺す者よりもとうとし」といっている。われらはここにおいて認識なるものに対して驚異の目を見張らざるを得ない。認識能力が人間の無上の天稟であり、めでたき宝であることを思い、認識が人生において占有する地位の厳粛なることを痛感せずにはいられない。知識の拡張は同時に自由の拡張である。無機物より有機物に進んで、人間に至るに従い、意志はしだいに明瞭に、認識は階段をなして発達しきたっている。すなわち生命はしだいにおのれ自身を認識してきている。それと共に自由はしだいに拡張せらるるのであろう。しかしながら氏のいうごとく自然現象と意識現象との間に前者は必然にして後者は自由であるというような絶対的の区別があるとは思えない。今日の生物学が言うように無機物にもなおきわめて低き程度の意識を許さねばならないならば、同時にきわめて低き程度の自由をも認めなければなるまい。自由は要するに程度の問題である。無機物より人間に至るまで実在の自己認識の努力の発達に従いてしだいに高き程度の自由に進むと考える方が、いっそう氏の思想を徹底せしめないであろうか。