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あいとにんしきとのしゅっぱつ
愛と認識との出発
倉田 百三
線上閱讀倉田 百三《愛と認識との出発(あいとにんしきとのしゅっぱつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 64,420 字 · 129 頁
これすなわち人間の堕落であり、罪悪である。ここにおいてわれらは常に失いたる楽園を思慕し、たましいの故里を憧憬し、対立差別の意識を去りて純粋経験の統一せる心境に帰らんことを求める。これすなわち宗教的要求である。
かくのごとく氏の宗教においては罪悪は対立差別の意識現象より起こるのである。しかしながら対立は統一の一面であって対立を離れては統一は考えられない。実在が自己の内面的性質を分化発展するのは宇宙現象の進行の根本的方式である。ゆえにもし対立差別を罪悪の淵源となさば、実在そのものの進行を、したがって神の意志を罪悪の根本となさねばならぬ。この不合理を除去するために氏は罪悪の本質的存在を影のごとく薄きものとなさねばならなかった。
元来絶対的に悪といふものはない。物の本来に於ては皆善である。悪は物其者に於て悪なのではない。実在体系の矛盾衝突より起るのである。罪悪は宇宙形成の一要素である。罪を知らざる者は真に神の愛を知ること能はず、苦悩なき者は深き精神的趣味を理解する事は出来ない。罪悪、苦悩は人間の精神的向上の要件である。されば真の宗教家は是等のものに於て神の矛盾を見ずして却つて深き恩寵を感ずるのである。