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あいとにんしきとのしゅっぱつ

愛と認識との出発

倉田 百三

線上閱讀倉田 百三《愛と認識との出発(あいとにんしきとのしゅっぱつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 64,420 字 · 129 頁

青空文庫

(善の研究――四の四)

といっている。かくて氏の哲学は一の楽天観をもって終わっているのである。

五

私らは哲学の批評に関して芸術的態度をとりたい。人を離れて普遍的にただその体系が示す思想だけを見たくない。興味の重点をその体系がいかばかり真理を語れるかという点にのみおかずして、その思想の背後に潜む学者の人格の上にすえつけたい。古来幾多の哲学体系は並び存して適帰するところを知らない。もし哲学をただ真理を聞かんがためのみに求むるならば、かくのごときは哲学そのものの矛盾を示すというような非難も起こるであろう。しかしながら哲学はその哲学者の内部生活が論理的の様式をもって表現された芸術品である。その体系に個性の匂いが纏うのは当然のことである。私は西田氏の哲学を、氏の内部生活の表現として、氏の人格の映像として見ることに興味を感じて読んだのである。また氏の哲学ほど主観の濃く、鮮やかに、力強く表われたものはあるまい。『善の研究』は客観的に真理を記述した哲学書というよりも、主観的に信念を鼓吹する教訓書である。敬虔にして愛情に富み、真率にしてやや沈鬱なる氏の面影がいたるところに現われている。