輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
つきもの
憑きもの
豊島 与志雄
線上閱讀豊島 与志雄《憑きもの(つきもの)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 12,983 字 · 27 頁
渓流の水は少く、河原が広くて、灌木や雑草が茂っている。河原伝いに、ほそぼそと路が続いている。私はその路をさか上ってゆく。白や赤の花が咲いている。思わぬところから小鳥が飛び立つ。人影はない。路はとぎれがちで、やがて叢の中に迷いこんでしまう。河原におりてゆき、大きな石に腰をおろすと、浅間の噴煙が真正面に見える。
噴煙とも思えないほどの、静かな白い煙である。空は青くあくまでも高い。その中空に、円みをもって盛り上ってる峯から、煙はゆるやかに流れて、行方も分らず消え失せる。頼りなく淋しい。剛壮な気など少しもない。私の心がそうだからであろうか。軽く眩暈がするようだ。顔を伏せて河原の小石を眺める。初夏の陽は照っているのに、その温かみを背には感ぜず、渓流に沿って流れる冷気が身内に伝わってくる。
孤独、寂寥、そういう思いの中に私は沈む。寂寥が渦を巻いて、その中心に、寂寥の眼とも言えるものがある。恰も颱風の中心みたいに、その眼も真空だ。そこを見つめていると、ふっと、も一つの眼が浮んでくる。秋子の眼だ。それが、私ははっきり言える。白痴の眼だ。私にとり憑いてる眼だ。白痴なだけに、私はそれから遁れようはない。