輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
あるさっかのやくび
或る作家の厄日
豊島 与志雄
線上閱讀豊島 与志雄《或る作家の厄日(あるさっかのやくび)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 10,284 字 · 21 頁
」
こんどは返事がない。
「もういい。」
さよ子は足音をしのばして出て行った。
何物にも囚われるな。そうだ。おれはジンのグラスを置いて、日本酒の燗にかかった。余り早く酔いすぎてはいけないのだ。酔うなら、相馬多加代といっしょに酔いたい。
彼女はどうして来ないのだろう。何か事変でもあったのではなかろうか。いや、そんな筈はない。きっと来る。来るまで待つんだ。いつまでも待つぞ。
電燈のあたりに、蝿が一匹飛びまわっている。羽音がうるさい。おれは扇子を取って立ち上り、叩き落そうとするが、なかなかうまくいかない。蝿は電球に滑り滑りくっついたり、笠の奥にはいりこんだり、室内に大きく円を描いて飛んだり、天井に身を休めたりする。長くかかって、漸くに叩き落してやった。紙でつまんで、押しつぶすと、ぐちゃりと大きな音が指先に伝わり、白い臓腑を噴出さしている。汚らわしい奴だ。紙にくるんで、さて、捨て場所に困ったが、構うことはない、便所に放りこんでやった。
小便をしていると、足がふらついた。
酔ったのかな。
両手を頭の下にあてて、仰向けに寝ころんでみたが、瞼が重い感じだ。眠ってはならない。