輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
あるさっかのやくび
或る作家の厄日
豊島 与志雄
線上閱讀豊島 与志雄《或る作家の厄日(あるさっかのやくび)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 10,284 字 · 21 頁
金がなければ、つまり、自由に使える金がなければ、おれだって、生きながら死んでるのと同じだ。彼女の気持がよく分る。もしも、このようなことを公言する者があったら、今の時勢に何を言うかと、おれはぶん殴ってやるかも知れないが、然し、おれと彼女だけは別だ。別だとは、他人でないということだ。
この頃、全くの金づまりで困る。一般にそのようだが、殊に出版界は甚しく不景気で、印税は払ってくれず、原稿料さえ後れがちで、前借などは殆んどだめだ。出版界以外からの借金も、ちょっと方策がつかない。それでも、相馬多加代との交際で、おれには余計な金がいる。昨日は、見当をつけて、或る出版社を訪れ、印税の残りを請求してみた。来月の十日まで待ってほしいと、社長からの返事だ。全く現金がないらしい。次に、或る雑誌社を訪れて、原稿料の前借を申し込んでみた。原稿執筆の約束があるのだ。編輯長はひどく当惑そうな顔をして、とにかく、原稿を、たとえ完結しないままでもよいから、持って来て頂けまいかと、逆な頼みだ。原稿さえ頂いたら、社長を説きつけて、御入用の金だけは、責任を以て直ちに出させるとのこと。