輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

あるおんなのしゅき

或る女の手記

豊島 与志雄

線上閱讀豊島 与志雄《或る女の手記(あるおんなのしゅき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 18,447 字 · 37 頁

青空文庫

時とすると、楓の幹に投げかけた片手に、新らしいハンケチを持ってることなんかもあった。私はその無骨なお坊さんの様子が、かく俄に変ってきたのを見て、軽い笑いを唆られることさえあった。それからまた彼は、私の学校の帰りには少しも姿を見せなかった。彼が門内に佇んでいるのは、爽かな日の朝に限っていた。青々とした楓の葉の下に、まだ朝露を含んでいそうに思われる清らかな空気に包まれて、箒を片手に苔生した地面の上に佇んでいる彼の顔を、私は初めて美しいと思ったことさえある。

かくて彼に対する私の警戒は次第にゆるんできた。彼から愛の心を寄せられてるということが、はっきり分ってくるに従って、若い私の心は軽い矜りをさえ感ずることがあった。頭の奥には一種の慴えが残っていながら、二度まで見た同じような幻を、いつとはなしに忘れがちであった。ああ、媚びに脆い処女の心よ! 私はうかうかとした気持ちで、お寺の前を通って憚らなかった。

彼と逢うのは、晴れた日の朝に限っていたが、それでも一週に一度か十日に一度くらいは、学校の帰りに顔を合せることがあった。彼は白い平常着のまま、御門の外に出て、通りをぶらぶら歩いていた。