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げさくざんまい

戯作三昧

芥川 竜之介

線上閱讀芥川 竜之介《戯作三昧(げさくざんまい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 20,807 字 · 42 頁

青空文庫

」

客は、襖があくとともに、滑らかな調子でこう言いながら、うやうやしく頭を下げた。これが、当時八犬伝に次いで世評の高い金瓶梅の版元を引き受けていた、和泉屋市兵衛という本屋である。

「大分にお待ちなすったろう。めずらしく今朝は、朝湯に行ったのでね。」

馬琴は、本能的にちょいと顔をしかめながら、いつもの通り、礼儀正しく座についた。

「へへえ、朝湯に。なるほど。」

市兵衛は、大いに感服したような声を出した。いかなる瑣末な事件にも、この男のごとく容易に感服する人間は、滅多にない。いや、感服したような顔をする人間は、稀である。馬琴はおもむろに一服吸いつけながら、いつもの通り、さっそく話を用談の方へ持っていった。彼は特に、和泉屋のこの感服を好まないのである。

「そこで今日は何か御用かね。」

「へえ、なにまた一つ原稿を頂戴に上がりましたんで。」

市兵衛は煙管を一つ指の先でくるりとまわして見せながら、女のようにやさしい声を出した。この男は不思議な性格を持っている。というのは、外面の行為と内面の心意とが、たいていな場合は一致しない。しないどころか、いつでも正反対になって現われる。