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そうわ

挿話

徳田 秋声

線上閱讀徳田 秋声《挿話(そうわ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 26,544 字 · 53 頁

青空文庫

道太は立ちがけに、わざと繰り返した。

兄のところへ行くと、姉が悦び迎えて、

「じつはお出でを願おうかと思っておりました。看護婦がちょっと粗匆をしましたので、あれほど信用しておいでたのに、たいそう腹を立てて薬もいっさい飲まんと言っておいでるので……」

看護婦が傍に泣いて詫びていた。

道太はやがて、兄の枕頭に行ってみた。兄は少しいらだっていたが、少し話をすると、じきに頷いてくれた。

「それから私もちょっと用事ができて、きゅうにいったんかえることになりましたので」道太は話しだした。

「どうもありがとう。わしはまあこれで心配はないから」兄はそう言って、道太が思ったよりさっぱりしていた。

道太はやっと安心して、病室を出ることができたが、しかし次の部屋まで来ると、にわかに兄の歔欷が聞こえたので、彼は思わず足が竦んでしまった。

それから兄の傍を離れるのに、また少し時間がかかった。そして子供のない兄の病床の寂しさを思いながら、辰之助と連れ立ってそこを辞した。

ステイションへは多勢来ていた。二人の姉もふみ江も来ていた。宗匠もおひろも見えたが、道太はそれでもお絹が来ておりはしないかと、乗ってからもあたりに目を配っていた。