輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

りゃくだつせられたるおとこ

掠奪せられたる男

豊島 与志雄

線上閱讀豊島 与志雄《掠奪せられたる男(りゃくだつせられたるおとこ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 23,398 字 · 48 頁

青空文庫

何をするのも懶かった。暑を避けて旅をすることさえも念頭に浮ばなかった。苦しい汗ばんだ午睡の夢から覚めると、ただ無心の眼を空の方に向けた。空には北に向って低い断雲が流れるように飛んでいた。じっと見つめていると、雲の運動と反対の方向に、木立や人家や地上のもの凡てが急速に動いていた。彼はその運動に身を托しながら云い知れぬ不気味な快感をさえ味った。太陽が断雲に遮られて、地上は急に陰闇な影のうちに包まれるかと思うと、またぱっと強い光線が降り注いで来た。

台風は琉球の沖合から四国の方へ殺倒していた。岡田博士の言に依ると、低気圧の中心示度は七百十粍を下っているらしかった。強猛な速度を以て四国及び内海中部を横断して能登沖に出で、更に北海道の西部までを荒すらしかった。その途中、余波は東京にまで及んで、多少の風雨を見るということであった。昨秋の台風の記憶がまだ脳裏に新たな市人は、中央気象台のやや鎮撫的な報告があるのにも拘らず、緊張した顔面に不安の色を湛えていた。帽子の縁に手をあてて飛雲の急な空を仰ぎつつ、人々は皆足を早めていた。

山田は帽子もかぶらずに、ぶらりと外に出た。