輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
たんていしょうせつのなぞ
探偵小説の「謎」
江戸川 乱歩
線上閱讀江戸川 乱歩《探偵小説の「謎」(たんていしょうせつのなぞ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 119,820 字 · 235 頁
もがく指だけが残って、それも見えなくなると、あとにはなにごともなかったようにじっとよどんでいる泥沼の表面、これらのすべての条件が、どんなお化けよりも、どんな拷問よりもいっそう深く鋭いスリルを生むのである。
また、たとえば磁石を失った曇天続きの砂漠旅行者の恐怖がある。見渡すかぎりの砂、空には鼠色の雲ばかり、太陽も月も星も方角の目印となるものは何もない。ただこれと思う方向へしゃにむに歩くばかりである。ところが、そうしているうちに彼はふとこんなことを考える。人間の左右の足は正確に同じ歩幅を踏むものかしら、いやいや、そんなことはあり得ない。すると、もし右足の歩幅が左足よりも一分でも広いとすれば、十歩で一寸、百歩で一尺、そして千歩万歩百万歩と歩くうちには、思いもおよばぬ大きな差異が生じて、つまり彼は砂漠の中を永久に円を描いてどうどうめぐりしている結果になりはしないか。事実そういうことが起る由であるが、現実よりもその着想だけで、旅人は底知れぬ恐怖におそわれ、立往生をしてしまうに違いない。またたとえば、早過ぎた埋葬のスリルがある。地底の棺桶の中でよみがえって、叫んでももがいても出るに出られぬ境地の恐ろしさ、これもまた現実よりも想像の中での方が(つまり文学的に)いっそう深刻なスリルの一種である。