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たんていしょうせつのなぞ
探偵小説の「謎」
江戸川 乱歩
線上閱讀江戸川 乱歩《探偵小説の「謎」(たんていしょうせつのなぞ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 119,820 字 · 235 頁
いま一段複雑味を加えたスリルには、幻想と夢の恐怖がある。阿片喫煙者の夢にでてくる現実を何十倍した巨大な風景や人物には何かしらゾッと総毛立たせるものがある。ド・クインシの「阿片喫煙者の告白」には、その意味での深いスリルが含まれているといっていい。それに関連して映画の恐怖とも称すべきものがある。谷崎潤一郎氏の「人面疽」はそのスリルをたくみに描きだして成功した作品であろう。かようにして、スリルは単なる感情から知識を加味したものに進み、やがて心理的な領域にはいっていく。
錯覚、物忘れ、意識の盲点などが探偵小説と深い縁を結んでいるのはなぜであるか。それらの心理上の現象に底知れぬスリルを含んでいるからにほかならぬ。探偵小説ではないけれど、ポーの「スフィンクス」では一匹の死頭蛾が山を駈けおりる大怪物に感じられる錯覚のスリルが主題となっているし、また「陥穽と振子」では暗黒の地下室に投げ込まれた人物が、壁に手をあてて室内をさぐり歩いているうちに、実は四角な部屋であるのが、無数の角を持った無限に広い場所のように感じられるという闇中錯覚のスリルを取り扱っている。また意識の盲点の恐ろしさが内外の短篇探偵小説にいかにしばしばもちいられているかはここに説明するまでもないであろう。