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たんていしょうせつのなぞ

探偵小説の「謎」

江戸川 乱歩

線上閱讀江戸川 乱歩《探偵小説の「謎」(たんていしょうせつのなぞ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 119,820 字 · 235 頁

青空文庫

スリルのスリルである。

ドストエフスキーのスリルについて語り出せば際限がない。すぐ宙で浮かんでくるものだけでも五つや六つではない。殺人者ラスコーリニコフが、人通りのはげしい道路で、突然ひざまずいて大地に接吻するという、恐怖ではないが、しかし非常にはげしい一種のスリル、「永遠の良人」の人物が、自分を殺すかも知れない男と、同じ部屋で眠る場面のいく通りものスリル、「カラマゾフ」のドミトリが、いいなずけの女から侮蔑的な態度で三千ルーブルを受け取り、それをほかの女と使い果たしてしまったかのごとく見せかけながら、実は半額の千五百ルーブルを着物の襟にぬいつけてかくしていた、そのことがどんな人殺しよりも窃盗よりも恥辱だという気持、しかしついにそれをうちあける場面の描写、あれには実に深い心理的恐怖が含まれている。私はあれを一つのスリルとして感じる。

別の作者をいえば、アンドレエフの出世作といわれる短篇に好例がある。上田敏博士が訳していられたと思うが、私は二十年ほど前、ストランド誌の英訳ではじめて読んで、いまでも忘れられないほどの印象を受ける。筋は、痴情の復讐から、ある女とその愛人を殺したうえ、しかも処罰をまぬがれるために、狂人をよそおい、さて目的をはたして、精神病院に入れられてから、自分はにせの狂人のつもりでいるがしかし