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せいだんじゅうにそう

政談十二社

泉 鏡花

線上閱讀泉 鏡花《政談十二社(せいだんじゅうにそう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 24,626 字 · 48 頁

青空文庫

から、言下に打出して事理を決する答をば、与え得ないで、

「都を少しでも放れると、怪しからん話があるな、婆さん。」とばかり吐息とともにいったのであるが、言外おのずからその明眸の届くべき大審院の椅子の周囲、西北三里以内に、かかる不平を差置くに忍びざる意気があって露れた。

「どうぞまあ、何は措きましてともかくもう一服遊ばして下さいまし、お茶も冷えてしまいました。決してあの、唯今のことにつきましておねだり申しますのではございません、これからは茶店を預ります商売冥利、精一杯の御馳走、きざ柿でも剥いて差上げましょう。生の栗がございますが、お米が達者でいて今日も遊びに参りましたら、灰に埋んで、あの器用な手で綺麗にこしらえさして上げましょうものを。……どうぞ、唯今お熱いお湯を。旦那様お寒くなりはしませんか。」

今は物思いに沈んで、一秒の間に、婆が長物語りを三たび四たび、つむじ風のごとく疾く、颯と繰返して、うっかりしていた判事は、心着けられて、フト身に沁む外の方を、欄干越に打見遣った。

黄昏や、早や黄昏は森の中からその色を浴びせかけて、滝を蔽える下道を、黒白に紛るる女の姿、縁の糸に引寄せられけむ、裾も袂も鬢の毛も、夕の風に漂う風情。