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けいごろん

敬語論

坂口 安吾

線上閱讀坂口 安吾《敬語論(けいごろん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 5,289 字 · 11 頁

青空文庫

オマエなどゝいう言葉が存在するのは怪しからん、という。人をよぶには常にアナタでなければならぬ。そんなことを力説してみたって、人を差別する気持があって、相手を自分より卑しいもの、低いものに見る観念がある以上、言葉の上でだけアナタとよんだって、なんのマジナイになるというのか。

人を見るに差別の観念がなければ、人をよぶ言葉はおのずから一つになるにきまっているし、かりに英語の如く人をよぶに、ユー、の一語しかなくとも、差別の観念のある限り、ユーの一語も発音のニュアンスに色々と思いが現れる筈で、やっぱり根本の問題は言葉の方にあるのではない。

女房をお前とよぶのは男尊女卑の悪習だというが、例がフランスの「お前よび」にある通り必ずしも男尊ではなく親密の表現でもあり、他人行儀と云って他人のうちはテイネイなものだが、友達も親密になると言葉がゾンザイになること、日本も「お前よび」と同断であり、女房をお前とよぶのも、むしろ親しさの表現の要素が多いであろう。

たゞ、日本の場合、女の方が亭主をアナタとよぶのが女卑の証拠だというのも、一概にそうも云えない。男言葉と女言葉の確然たる日本で、男女二つの呼び方が違ってくるのは当然で、アナタとよぶことが嬉しいという日本の女性心理には、日本の言語の慣例を利用して、愛情を自然に素直に表出している