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ぶんかせいさんしゃとしてのじかく

文化生産者としての自覚

宮本 百合子

線上閱讀宮本 百合子《文化生産者としての自覚(ぶんかせいさんしゃとしてのじかく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 4,920 字 · 10 頁

青空文庫

それから今日まで、十数ヵ月経つ間に、民衆のとりもどされたはずであった出版の自由や言論の自由というものは、どういう現実で推移して来ただろうか。これについては、真面目な反省がいる。

形式の上で、自由にされた出版、自由にされた言論が、現実に自由に存在するためには資材がいる。出版の自由は、自由につかえる紙が土台である。紙が闇で、それは刻々に値上りし、紙のタヌキ御殿が出現して新聞を賑わす有様は、出版の自由がどんなに歪み、単に営利化されているかという事実を表明している。一頁あたりの闇紙が高価ならば、その一頁からうんと儲けなければならないのが、資本主義の出版企業である。卑猥な出版物が全く闇紙をつかって、しかも厖大な利潤を得ているのに、教科書がないこと、参考書がないことを訴えている学生は、国民学校から大学から労働者学校に充ち満ちている。ごく具体的な一例を仮定すれば、父親の小説は一冊千円でうれているのに、その子の教科書は払底している、という矛盾があらわれているのである。

営利出版が、出版の自由を確保しない上に健全な意味で言論の自由さえ奪ってゆく。なぜなら、社会に生活する健全な精神の人間生活は、決して情痴の口説で終っているのではないから。