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ぶんだんむかしばなし

文壇昔ばなし

谷崎 潤一郎

線上閱讀谷崎 潤一郎《文壇昔ばなし(ぶんだんむかしばなし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 9,802 字 · 20 頁

青空文庫

の時代から見ると、今日の時代物文学の発達はまことに眼ざましいといわねばならない。もはや現代では「高師直」程度の作品は通用しなくなっている。

○

ところで、かくいう私も、樗陰の晩年になって、すっかり彼に嫌われてしまったらしい。尤も私は原稿を突ッ返された覚えはない。が、大正十二年正月号に中篇物を掲載したのを最後として、十四年に彼が病死するまで、遂に彼から原稿の依頼を受けたことはなかった。それどころか、彼は長文の手紙を二、三度も寄越して、「近頃の君の書くものは感心出来ない」と、かなり露骨にいって来た。たしかその時分、里見君が『時事新報』に「多情仏心」を連載し、私が『朝日新聞』に「肉塊」というものを連載中であったが、樗陰は「里見君のものに比較して君の作は甚しく見劣りがする、しっかりし給え」というのであった。私を激励するつもりも多少あったかも知れないが、「どうも歯痒くて見ていられない、もう君なんぞに用はない」といった悪意も含まれているように聞えた。こんな工合に、原稿の注文をしないだけでなく、積極的に、進んで喧嘩を売りに来るなんて編輯者は、樗陰の外には見たことがない。