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ぶんがくへのじっかんについて
文学への実感について
豊島 与志雄
線上閱讀豊島 与志雄《文学への実感について(ぶんがくへのじっかんについて)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 2,838 字 · 6 頁
事変下の文学について、改めて文学の実体ということが問題になってきた。それについて一私見を述べてみることにしよう。
考察の糸口を引出すために、ごく素朴なことを先ず考えてみる。――文学は常に、現実に対して、マイナスのものとプラスのものとを持っている。これは芸術一般にも通用する常識である。現実を如何に如実に描写しようとしても字義通り如実に描写出来るものではなく、必ず足りない所があるものであって、この不足の部分、マイナスの部分を伴うことはあらゆる描写の必然の運命である。だから描写には対象の特異相の選択ということが重要となる。描写の秘訣は選択に在るとも云い得らるるだろう。――然るに文学が、描写は止まるものではなく、何等かの意味で表現だと云わるる所以は、それが現実に対してプラスのものを持つからであろう。このプラスのものとは、云うまでもなく、対象への関心の持ち方、批判とか解釈とか要望とかいうもので、大袈裟に云えば、先の見通しをも含めた現実整理の仕方であり、主観的に高調すれば、現実に加えられた作者の心血となる。
ところで、現代の文学が当面している困難は、このプラスのものの無力さを痛感してるところにある。